私の箱物語

バリウム

バリウムにね、言いたいことがある。
一言ね、どうしても。

最近あたしは、周りから「しぶちゃんは箱から出たらつまんないよ。」とか、
「箱から出てるしぶさんは、しぶさんらしくない。」とか言われるくらい、
箱の外の生活が長いわけ。

でもこないだちょっと凄いヤツと出会った。
もうね、人を箱に入れる天才。
スゴ腕ね。

ヤツの名前は、

バリウム。

実はこの年になるまで、一度もバリウムに触れた事がなかった。
白い液体でね、結構みんなに嫌われてる事くらいしか情報持ってなかった。

その日、いつもと同じように家を出た。
胃の検査がある以外は、なんら変わらない一日になるはずだった。

それをね、バリウムがね見事に打ち砕いた。

ヤツは検査室に入ると早速渡される。
ペットボトルのような容器で、
口が広くなってるボトル。
ヤツがね、バリウムが、飲みやすくなてる。
口を広くして一気に飲める構造になってる。
それでね、なんかちょっと生温かいの。

すると先生が「それじゃ練習で、一口バリウムを飲んでくださーい。」って言った。

練習?
先生、練習ですか?!
バリウム飲む練習??

これもねー、やったことなかった。
油断してた。
バリウム飲むのに練習があるなんて。
予想外。
想像外。
想定外。

でもこの時はまだ知らなかったからね、バリウムのこと。
だいぶ長いこと皆に嫌われていたんだろうね、バリウム。
ちょっとね、女性とか若い人の気を魅くように、
ヨーグルトの香りがする。

若干躊躇してると、「はい、飲んでー!」って先生が結構ビシッと言うから、
初体験ってこともあって、怖いもの知らずも手伝って、
グビッとね、行ってみた。

うぇ~。

うぇぇ~~。

中華ならね、トロみも美味しいでしょう。
フレンチなら、まったりもいいでしょう。
病気の方には人肌の温度は有難いでしょう。

でも、バリウムには不要ね。
どれも不要だから。

もう最悪。

しかも先生、次々に指示出してくっから。

じゃ、ちょっと多めにバリウム飲んで!
右向いて!そのまま1回まわって!
あ~、もっと速く!
残りのバリウム全部飲んで!
はい、次は逆回転!!
止まって!

あー、忙しい。
忙しいですよ、先生!

慌しい中、私の胃の撮影は終了となった。
しかし、これでは終わらなかった。

バリウムをね、バリウム様を体外へ排出するのに、
今度は下剤様の登場。
ペアみたいね。バリウム&下剤。

下剤って、困りませんか?
こんなところで当たり前のように登場されても困りません?
今飲むと困りませんか??
だって、トイレが必要でしょう?
下剤飲むと側にトイレが必要じゃないですか??

バスとか電車とかで移動中に、
'うっ'ってなったらどうすればいいんですか?
もう'うゎぁわわ'ってきたら、どうすればいいの?!

世の中には素敵な組み合わせってあるけどね、
お似合いですねぇ~とか言われるペアとかあるけどね、
このコンビ最悪だから。


大抵の人が嫌悪感を抱く物やヒト、あるいは環境がある。
あんなんならしょうがないね、と共通の認識を持ちやすい場合には、
抵抗感・罪悪感もさして感じることなく箱に入ることができる。
入って当然のような。
箱に入ることの理由や言い訳も手に入りやすい。

不幸な不運な境遇、
高圧的で身勝手な上司を持つ部下、
陥れられたり裏切られたように誰もが感じる時、
最善を尽くして結果が得られない時、
さまざまな瞬間で箱に入るきっかけが用意されている。

でも、どの瞬間にも「箱に入らない選択」ができるのだと思う。
大切な人を失った時でも、
何かを横取りされた時だって、
無実を責められたとしても、
箱に入らずに「次へ」の解決策を手にできる。
どの気持ちを選択するかの自由を、いつも私は持っている。
なのに、環境や何かのせいにして箱に入ることを正当化してしまう。
「こんな時は箱に入っていい。」なんてことは、やっぱりない。


先生、ごめんよぉ。
ちょっと八つ当たりしてしまっただよ・・。
先生の指示に「はい。」って言ったけど、
その「はい。」は「はいはい、わかりましたぁ。やればいいんでしょ、やれば。」
みたいな「はい。」でした・・。

今度は、次回はもっと気持ちよくバリウムが飲めるように頑張ります。
一年後ね。
忘れないといいケド・・。

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