私の箱物語

福引き

福岡には商売の神様を祀った十日恵比須神社がある。
毎年1月8日から11日は“正月大祭”が行われ、商売繁盛を願う大勢の博多の商人が訪れ期間中の人出は100万人にも上る。

そしてこの正月大祭の名物が福引き。2000円で空クジなし。
商売繁盛の縁起物が必ず当たるとあって、まずは福引き券を買うのに並び、クジを引くのに並ぶという過酷な過程がある。


私は人混みが大嫌いだ。


さて、お正月も終わったある日のこと。
ウチの母さんが「十日恵比須へ行こう」と言い出した。
お正月にも「太宰府に初詣行こう」という誘いを、なんとか茶を濁してウヤムヤにしていたので今回は覚悟を決めることにした。

何日か前から天気をチェックしていたが、予報は“雨”。そのうち変わるかなぁと願っていたが、相変わらず“雨”。
そして当日の朝もやはり“雨”。それも結構な降りようで。

「やっぱ止めよ」とか言うかと期待していたら、「長靴履いていこ」とか言いながらイソイソと支度を始めている。
再度覚悟を決めて私も長靴履いて出かけた。


雨は一向に止まない。
神社に着いてお詣りを済ませてクジを買う列に並んだ。まだ8時半だと言うのにもう既に長蛇の列。
後から来た参拝者の方が「これは何の列ですか?」とお巡りさんに聞いている。「クジを買う列です」と答え、その後の質問の答えに耳を疑った。
参拝者:「福引きは何時からですか?」
お巡りさん:「10時からです」


じゅ

じゅ

じゅーじ?!


何となく列に並んでいた私は、福引きが始まるのは9時からだと思っていた。
いや、むしろ当然9時からだろうと。


雨は止む気配もなく、地面からジワジワと寒気が上がってくる。
足の先が冷たくなって時計を見たが、まだ8時50分。


帰りたい。。。


10時からと隣で聞いていた母は「じゃ、諦めようか」と言うかと思ったら、「9時からかと思ったね」と軽く言いながら帰る気配はない。


私は

だんだんと

不機嫌になる。


やっぱ断ればよかったよなぁ。
昨日も遅かったから疲れてるのに。
何でこんな土砂降りの中ボケーっと1時間半もつっ立ってないといかんのやろ。
親孝行も体力勝負やなぁ、と心の中でつぶやいていた時、


ふと


だいたい何でこの人は商売もしていないのに、この雨降りの寒い中この列に並んでるんだ?!という問いが浮かんできた。




そう

それは

商売をしている私のため。





10時に近づくにつれ雨は小降りになり、やがて上がった。
母さんは財布からゴソゴソと2000円を取り出し、「あの鳥居の所で待っとくね」と言って列を離れた。



なんとちっぽけな私。
いつまで経っても自分の事しか考えられない私。
これまでに、どれだけの優しい想いを不意にしてきたことか。


今年は他の人からの優しさや想いに、余すところなく気付き感謝できる一年にしたい。
そう想いを新たにさせる年頭の出来事でした。

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