私の箱物語

ウチの母さんpartⅡ

ウチの母さんは、ラジオ体操をしている。

本当なら、
毎日ラジオ体操をしている、って書きたいとこだけど、
もちろん毎日はやらない。

こないだは、体操の音楽が始まってるのに、
窓の外を眺めながら“ボケッ”としてるし、
私が朝ご飯を食べてると「私も食べよっと。」とか言いながら、
テーブルへやって来たりもする。
そうかと思うと自分の用意が早くできて、
ラジオに向かって「遅い!」とか毒づいている時もある。


そんな母が体操をしている様子を眺めていると、


何やらおかしい。


そう、

音楽とズレているのだ。

しかも、遅れているのかと思えば、ちょっと早いのだ。


母さんに、
「ちょっと早いよ。」って言うと、

「うん。ちょっと早目にやっとかんと遅れるっちゃん。」とか言う。


フリーダム。




少し前に、二階へ着替えを取りに上がった時のこと。

階段の下から、


「わかる?」


と、素敵な笑顔で勝手にクイズを始める。


何の脈絡もなし。
主語もなし。


やべー

難しいわ。

何や?

何のクイズや?

ってか、問題出されてないのに答えを要求されとるぞ。


考えろ!

考えろ、あたし!

あの笑顔が消える前に答えを見つけるんだ!!


と、顔色を変えずにとっても焦ってた。


次の瞬間、




あ、




パジャマ。


新しいパジャマを着ている!!!




今世紀最大の大発見。




冷静を装って「あ〜あ、パジャマやろ。」

と、そっけなく答えると。

「あたり。」

と敵もそっけなく階下から消えた。



なんだ?!


何なんだ、一体!!




そんな母がこの度、目の手術で入院することになった。
恒例の「ご家族の方に説明。」のプログラムがあり、
母と一緒に病院へ行った。

広すぎる待合室。
一人で4つずつくらいソファー使える。
適当なところに腰を下ろすと母も隣に座った。



ん?


んん?


母さん、



近いよ。



座った位置がね、近すぎるよ。

ってか、あたしのコート少し踏んでるし。


でも、「この辺かなぁ。」と思って座った位置が、
ちょっと近かったってことあるでしょ?
だから母もそうなのかと思って、
反対側へ少しズリズリっとよけてみた。

すると、

よけた分だけ母もにじにじと寄ってくる。



ははーん、



怖いんだ。



手術するのがね、怖いのね。



そういえば行きのバスの中も静かだったし、
私のボケにも乗ってこなかったもんな。

とても緊張した面持ちで先生のお話を聞いて、
翌週から入院生活のはじまりはじまり。


夕方お見舞いに行くと、
夜ご飯を食べていた。

食事だけが楽しみなのに、「ご飯が固い。」そうだ。


翌日、病室でテレビを見ていたら、
流行りのカフェの特集が始まった。
一番人気の「キャラメルパンケーキ」の紹介中に、
隣で食事中の母が「へー、固めのパンケーキとかあると?!へー。」



・・・。



キャラメルパンケーキ
かためのパンケーキ



まさかの聞き間違い。



ご飯、そんなに固かったか・・・。




先月末、手術を終えて無事退院。
母も来年は古稀を迎える。
いつまでこんなふうに過ごしていられるかと考えると、
寂しい気持ちと悲しい気持ちがやってくる。

毎日を過ごすのにも手助けが必要になったり、
私のことを忘れてしまう時がくるかもしれない。
そんなことの悲しさや、もどかしさを想像することは難しい。

でももし、あなたが私のことを忘れてしまっても、
あなたが私にしてくれたことを覚えていたい。
着替えに時間がかかるときも、
ご飯をこぼしてしまったときも、
私に誰かを尋ねたときも、
自分の感情より、私の中にいるあなたを大切にできますように。


今年も一年、元気に過ごしてくれてありがとう。

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