私の箱物語

ウチの母さん

「ボーナス」


あるいは


「賞与」


もしくは


「一時金」。


いい響きね。



ここ10年くらい縁がなかったけど、
わが社も、ボーナスを出してもいいんじゃないかと。

社長に相談したところ、もうノリノリだったもんで、
ボーナス、もらってみることにした。

でも実際に出すとなると、
意外と消極的で、
下期のこととか考えてしまう・・。

世の社長の気持ちを少し実感。


日頃親不孝なので、母さんと山分けしてみた。

するとウチの母さんは、

「何に使ってもいいの?」と聞く。

「いいよ。船でも別荘でも買って。」と答えると、

「洋服買わんでもいいとよね?」と更に念押し。



ん?



何に使うのか聞いてみると、
叔母さんから譲ってもらった母さんのお気に入りの椅子があって、
その椅子が古くなったので修理したいとのこと。

どうやら、今年何度か差し上げたお小遣いも、
この椅子の修理代に貯めていたらしい。



なるほど。



そうか。



母さんの喜びは、もっと日常的なものだったんだ。



服や靴やバッグを買ってあげたり、
どこかへ連れて行ったり、美味しいものを食べたり、
それをすれば喜んでもらえていると思っていた。


もちろんそれも嬉しかったのかもしれないが。


針に糸を通してあげたり、
シーツの反対側を引っ張ったり、
一緒に掃除をしたり、
同じテレビを観て笑ったり、
お茶を飲みながらどうでもいい話をしたり。


そう言えば、随分目が悪くなったんだなと気付く。
火傷をした手を隠していたり、
風邪を引いてこっそり寝込んだりしている。



よし。



やりなおし。



母さんの喜ぶこと、もう一度考え直そう。






でもさ、





昨日、私が

「これからお化粧しようと思う。」って言ったら、

『えっ?!』みたいな顔したよね?

『何を今更?!』って言いたそうだったよね?

そしてとうとう、

「もう少し早く始めてればね・・・。」って口に出して言ったよね?

それからすぐに

「あぁ、でも人間何を始めるにも遅いってことはないらしいよ。」ってフォローしたよね?





ありがと、母さん。





私は、あなたの娘で幸せです・・。

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